彩の国ビジュアルプラザ映像ホールでの上映会

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アニメフリップフラッパーズの非公式上映会「ピュアシアター」の会場である「彩の国ビジュアルプラザ映像ホール」での上映会開催に関する情報をまとめました。
1クールTVアニメの非営利上映会を念頭に、開催に興味を持たれる方の参考になればと考えて書いています。
ピュアシアターの開催経緯やその際の法律関係については前の記事をご覧ください。

この会場でできる事

「彩の国ビジュアルプラザ映像ホール」は325席、350インチ相当(16:9のHD映像の場合)のスクリーンがあり、本格的な機材設備を整えた映画館並の施設です。
機材は本格的過ぎて私のような素人に弄れるものではありませんが、こちらの会場では施設スタッフ2名体制で、映写や照明などの機材操作や映像ホール内との連携調整を行ってくれます。
ただし施設スタッフの仕事は基本的にそこまでで、イベント運営上の準備や受付等はイベント側のスタッフが行う必要があります。


各種設備

具体的に何をどのように使うかはイベントごとの個別相談事項ですが、ピュアシアターで使用した個所について一通り説明します。

BD上映

BDソースで上映する場合に必要な事はBDを持ち込んでスタッフに渡すだけです。ただし再生確認や上映用機器へのデータ転送をするため事前に持ち込むのが基本で、2週間以上前に持ち込むのが理想的です。
BDソフトに含まれるトレーラーやタイトル画面などは省略した本編のみで上映してくれますし、複数枚のBDもシームレスに連続上映してくれます。
メディアとの相性などによる再生トラブルはつきものですから余裕をもって準備するのが吉です。実際1回目の時は一時的に音声が無音になる現象が5~10秒ずつ3回発生しました。現象はBDの特定の巻で出たようでしたので相性的な問題があったのかもしれません。その時はそのまま続行したのですが、貸し出される連絡用PHSで再生エラー時に映写室と連絡を取って、例えば1分戻して再生し直しすることも可能です。
ただBD機器が民生品のためエラーを完全になくすことは難しく、音声でなく映像が乱れた事例もあったとのことですし、問題の性質によっては再生し直しても改善しない可能性もありますので、問題発生時の対処は可能な限り想定しておいた方が安心です。

BD以外の上映

自分で作成編集した映像を上映する場合はファイルを持ち込めば再生できます。USBメモリ、BD、HDD、インターネット経由など、手段は概ね何でもよいようですが、ファイルフォーマットなどの仕様確認や事前の再生確認が望ましいです。
ファン制作の映像を上映した際は、事前に編集済みなのが望ましいとのことでしたので全てつないだ1本にして渡しました。作品間の音量バランスだけは気を付けて調整しました。
プロジェクターは4K映像に対応しているとはいえBDの上映はHD相当となるわけですが、対応可能な形式で持ち込めば4Kでの上映も可能とのことです。ピュアシアターでは一部CG作品を4K上映が可能かもと検討したのですが準備時間不足で断念しました。

音響

音響設備も劇場並みですので迫力ある大音量で再生でき、自宅環境では聞こえない細かい音まで聞こえてきます。1回目も2回目もこんな音が入ってたんだ…という感覚を何か所も感じました。
音の再生に関しては、当日の開場前にホールで音量確認する程度で、基本的に施設スタッフにお任せでした。音量高めにとか低めにとかも指定できると思いますが、調整ポイントを良く把握していないと逆に失敗しかねない心配はあります。
音声再生に関する選択肢としてステレオとサラウンドがありますが、基本的にはソースメディアの収録方式で決まってしまうので、2chソースの場合はフロントの左右スピーカで再生することになりますし、5.1chソースの場合はサラウンド再生になります。
ピュアシアター2ではDPLIIによる5.1ch化上映を行いましたが、その時は事前に別途5.1ch変換した音声を合わせて上映していまして簡単でない面がありました。

BGM/BGV

開場前や休憩中に場内にBGMを流したり、スクリーンに静止画または動画を映すことができます。

マイク

場内アナウンス用にマイクを使用できます。ごく短時間の使用だけだと実質的に費用がかからない(おまけ?)こともあるようですが、使用内容によってケースバイケースかと思います。

ホール内からの映像出力

ピュアシアター2では休憩中にホール中央に配置したPCからHDMI出力した原画ビューアをスクリーンに投影して使用できるようにしていました。もっともステージを同時刻に展示でも使うための照明もあり必ずしも見やすいとは言えなかったのですがこれは企画の問題です。
ともかくHDMI接続により何かをスクリーンに映すことはできますので、ステージイベント等の用途があれば利用可能です。
なお、HDMI接続は機器との相性により映像出力に問題が発生することがありましたので、事前の接続確認が重要です。特にその表示がイベント進行上重要な場合は必ず実際の機器での事前確認が必要です。

ステージ

この映像ホールはスクリーン前にステージがあり、そこで何かを行うことも可能です。ピュアシアターでは昼休み休憩中に、ステージを展示台として使用して原画動画や他の資料の展示を行いました。

地がすり(じがすり)

これはステージ上に敷く黒いシートです。なくても上映できますがステージに反射した映像が視界に入りやすくなるかもしれませんので基本的には地がすりを敷くのが前提になるかと思います。

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ステージへの映り込み(映写室から撮影)

控室

ステージ裏にある控室がスタッフの荷物置き場などに使用できます。

ホワイエ・受付

ピュアシアターではロビーと呼んでいたホワイエ、ここには受付用のカウンターがある他、テーブルや椅子を使用しての展示や飲食もできます。
ピュアシアターの場合、会場直後のみスタッフが受付をして、他の時間は手が空いているスタッフがいる時だけ対応しました。想定される参加人数より席数が十分多い事から受付時間終了後は案内説明だけ置いて自由入場としていました。

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自由入場時の受付付近

ブザー

各パートの開始時にブザー(またはメロディ)を鳴らしてくれます。鳴らすかどうか指定できますが、あった方が区切りがわかりやすいという声を受けてピュアシアター2では毎回鳴らして頂きました。


費用

料金表が施設のウェブサイトにあります。 料金表 http://www.skipcity.jp/price/#ha

こちらの会場を使用するのに必要な料金は、会場使用料と設備使用料になります。
会場使用料は会場の使用時間で決まり、予約確定時に支払います。使用時間は施設の鍵を開けてから閉めるまでですから、上映時間に加えて入退場や休憩時間を加えた時間になります。料金は曜日と時間帯によって変わります。
設備使用料は実際の使用時間に基づいて後日請求されます。プロジェクターの使用料等は休憩時間を含まない正味の上映時間で計算されます。多少甘めの計算をしてくれるような気もしますが、場合によると思いますので多少変動しても問題ないように考えておいた方が良いと思います。

料金メニューの中でピュアシアターで使用した設備は、大型プロジェクターシステム、HD-VTR、音響装置システム、地がすりです。
BDから上映する場合に「HD-VTR」料金が必要になるとのことです。「音響装置システム」はサラウンドの場合には「音響装置システム(サラウンドシステム機能)」の方に変わり、多少料金が上がります。

料金の計算例として土日祝に1クール相当5時間程度の上映時間に入退場と休憩の時間を加えてピュアシアターよりは若干短く13:00~20:00とした場合、下記のようになります。

設備 単価等 料金(円・税込)
会場使用料 (午後)19,500+(3時間)5,610x3 36,330
設備使用料計 41,280
 音響装置システム 2,960x2(区分) 5,920
 大型プロジェクターシステム 6,100x5(時間) 30,500
 HD-VTR 840x5(時間) 4,200
 地がすり 330x2(区分) 660
会場使用料+設備使用料 77,610

会場使用料と設備使用料の合計で税込み7万8千円程度になります。
開始を午前にずらして10:00~17:00とした場合、会場使用料が (午前)9,480+(午後)19,500で計28,980円と7千円程低くなります。
使用時間や使用設備により増減するとしても、大雑把には1クールのアニメが7~8万円程度で上映できる感覚です。


利用の流れ

利用するまでの流れです。実際に検討する際は施設ウェブサイトにある「ご利用の流れ」も合わせてご確認ください。
施設スタッフは(開催日以外は)原則平日勤務ですので相談や打合せは平日の業務時間内になります。
単純な上映のみであれば実質的には大した打合せの必要はないこともあるかと思いますが、この会場の使用が初めての場合は会場の使い方や導線の確認も含め、申請前または事前打ち合わせ時に現地打合せをした方が良いです。

開催まで

まず電話で希望日の映像ホールの使用可否を確認します。
あとで申請書に使用時間帯や使用設備を記載する必要があるので、実施内容を交えて相談します。
遅くとも開催の1か月くらい前には申請書の提出(原則電子メール)が必要で、申請後1~2週間程度で結果がわかります。1年くらい前から申請可能なので日程を確定させるためには十分早めに申請するのが望ましいです。申請が通ったあとで会場使用料を銀行振込で支払うと予約が確定します。
開催2週間前までには開催時の流れなどを打合せします。ただし申請前の段階で十分内容が決まっているならば、申請前の打合せで兼ねることもできるかもしれません。
打ち合わせ時にメディアの再生確認もします。スクリーンに映写しての確認やホール内での確認は施設使用中の時や設備調整中にはできないため、事前に日程調整が必要です。
上映用メディアは打ち合わせ時に渡すか宅配便で送付します。
BGMなどのメディアは当日開始前に渡すことも可能ですが、再生トラブルがあると対策する時間が限られますので注意は必要です。

開催日から開催後

使用開始時刻に映像ホール入口に行けば中から鍵を開けてくれます。
上映自体は施設スタッフがすべてやってくれますので、上映自体に関して主催者がすることはほぼありません。開始前に再生音量確認を求められる場合がある程度です。
主催者側のイベントスタッフは受付等のイベント自体の運営をすればよい事になります。
上映の終了後は、後片付けをしながら、再生に使用したメディアの返却を受け、提示される使用機材の確認書にサインします。この手続き自体の所要時間は5分以内です。
その後は原状復帰して全員が退出すれば当日の作業は完了となります。ピュアシアターの場合は10~15分程度で退出できたと思います。
その後1週間程度で設備使用料の請求書が送付されますので銀行振込で支払えばすべて完了です。

準備資料

当日の進行を説明するため資料を作成し施設スタッフに事前の打合せ時に説明しました。

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進行表


その他のこと

会場に関する注意点

来場者の出したゴミはホワイエ内のごみ箱に捨てることができます。常識的な範囲を越えるようなものは問題があるかもしれませんが。
1階にコンビニと中華料理店がありますが、コンビニの閉店時間が早い点、弁当類の品ぞろえが限定的な事にも注意が必要です。併設施設があるため休日は家族連れ客でにぎわっていたりしますが、食料調達手段は限定的な立地ですので来場者にも注意してもらう必要があります。
コンビニが10日くらい前までお弁当の注文を受け付けてくれますが、非営利上映の場合は主催者による代金授受が問題になる可能性もありますから注意が必要です。また注文者が来ないキャンセル対策も必要になります。
また映像ホールの周辺含め家族連れや子供も多く訪れる場所ですし、公営施設ですので、展示内容などには一定の配慮が必要と思われます。

まとめ

この会場は電車+バス+徒歩で新宿駅や東京駅から1時間程度の場所で、広域から訪れる参加者にとって非常に行きやすい立地とは言えないかもしれませんが、実際に行ってみれば案外遠くはない印象もあります。
施設スタッフは対応できることについては親切に対応して頂きましたし、ピュアシアターではとてもよい上映会が開催できたと思います。他の同様のイベントにもお勧めできます。

以上2回の上映会イベント開催で経験したことを書きましたが、こちらの会場で上映会を開催される場合、また他の会場で開催される場合も何か参考になることがあれば幸いです。

ピュアシアター開催の概要

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これまでフリップフラッパーズのファン主催による上映会(いわゆる自主上映会)を2回開催しました。このような上映会を開くこと興味を持たれている方もいらっしゃるようなので、その時の運営面の事項をまとめてみました。

開催の経緯

フリップフラッパーズは、TV放映後終了後の2017年2月に映画館「シネマート新宿」で上映が行われました。
その際は全13話を3週間に分割して週替わり上映され、特典として実際に使われた原画や動画が配布された点でも注目されました。定員60人のシネマート新宿「スクリーン2」で連日立ち見が出る盛況を受け、最終日2017/2/24(金)はより大きな「スクリーン1」での上映が行われたのでした。
私はその公式上映(私たちが開催した「非公式」上映会と混同しないよう便宜上そう呼ばせて頂いています)の時まで、上映に通う程度に気になっていたとは言えそこまで深く入れ込んでいたというわけでもなかったのですが、TVシリーズのアニメを劇場で見る体験を通して沼の深みにはまり込んでいったようなものでした。
その後で他のアニメ作品でファン主催の上映会が企画されていることがフリフラファンの間で話題になった時、同じようなことがフリップフラッパーズでもできるかもと考え始めたのが開催のきっかけとなりました。


法律面

調べてみればアニメ作品の上映会は各所で行われており、一部は許諾を受けて上映される場合もあるようですが大半は無許諾の上映会で、そのような無許諾の上映会のうち著作権に配慮しているものは著作権法第38条第1項に基づいて行っていることがわかりました。

非営利上映

その著作権法の条項は次の通りです。
「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。」
簡単に言えば非営利で無料であれば上映できるということになります。そこまではわかりやすいのですが、それ以外のことも含めて著作権法に詳しい弁護士に相談しました。

相談した事項

弁護士に相談したいろいろな内容を以下に簡単にまとめました。
単純に非営利上映だけ行う場合は法的にはクリアといってよいと思われますが、個別の事例への適用については著作権に専門家に相談することをお勧めします。

課題 弁護士の意見やピュアシアターでの実施状況
映像作品の本編や特典映像等の上映 著作権法第38条第1項に基づき可能です。
市販BD等の使用 問題なく、また仮に上映等での使用を禁止する旨の記載があったとしてもそれによって著作権法第38条第1項が無効化されることはないと考えられます。
二次創作作品・MAD作品の上映 上映そのものは同じ条項でカバーされるものの、二次創作の制作段階の問題により法的に問題がないわけではありません。そのためピュアシアターでは比較的こっそりと扱っています。
原画・動画の展示 基本的に問題ありません。なお原画や動画は著作権法は美術の著作物の原本に該当します。
ウェブサイトやチラシ等での作品名称の使用 仮に商標登録されていた場合含め名称を記載することは問題ありません。単なる名称の使用と違いロゴ等の使用は著作権法上問題があります。
チラシ等での本編等の画像の使用 複製権の侵害となります。一般的に無許諾の使用は許容されない可能性が高いと思われるので使用していません。
チラシ等でのファンアート等の使用 同様に複製権等の侵害となりますが、同人イベント等での事例を参考にファン制作のイラスト等を使用しています。
営利とは 例えば、同人誌・同人グッズ等の物販、それらの紹介、それらを掲載するウェブサイトの紹介等、企業等の名称をもって開催する事、その他直接・間接に主催者の利益となること、等が営利にあたる可能性があり、これらのことを上映に関して行えません。
上映作品の撮影 撮影そのものは私的利用の範囲であれば著作権法上の私的複製の範囲となりますが、それをtwitter等に投稿したりすると著作権侵害となり、またそれを許容すると上映会自体もその幇助となる可能性もあります。ピュアシアターでは一般的な劇場上映の状況に鑑みて撮影は禁止としています。

著作権法第38条第1項に基づく非営利上映に際して権利者に何らかの連絡・確認をすべきかという点について、弁護士の意見としては連絡はしないのが良いということでした。
上映が可能であることは法律によるもので権利者の見解に左右されないので、連絡することによる益はない一方、法律上の効力はともかく権利者として禁止する、または上映はしないことを希望すると表明することは可能なため、仮にそういう主張をされると、法律上はそれによって上映ができないことはないにしても判断の難しい問題が発生する可能性があります。
また、同一の弁護士への相談になりますが、別の方による上映会についての相談事例が紹介されているページがありますのでそちらも参考になります。 http://domedeshow.com/legal/screening/

さて、上記からわかるように、ピュアシアターで行った活動のすべてが法的にクリアというわけではなく、場合によっては問題となる可能性がある要素も含まれています。
その一方で法的に問題があろうとなかろうと、具体的に何らかのトラブルになる事のリスクや対策についても専門家に相談しておくと良いと思います。

許諾上映の試み

上記の話とは別に、著作権法第38条第1項に基づく上映ではなく許諾を受けての上映はできないかとも考えてBDの発売元であるハピネットピクチャーズに上映会でのBD使用許諾について問い合わせたのですが、個人向けの許諾はしていないとのことで実現しませんでした。
仮に許諾されたとしてどのような金額感になるか全くわからないのですが、当時は実現できたとしても1回限りとの心づもりでしたので、仮に想定を相当に上回る費用感であったとしてもそれを負担して開催するのはありではないかなどとも考えてはいました。もっともそのような場合だと複数回開催は難しかったかもしれませんけれども。
映画作品などでは容易に許諾を受けて上映ができる作品もあるようです。ただアニメTVシリーズの上映会となると開催数も少ないでしょうし、個別に許諾事務を行うだけのメリットが少ないだろうとも思うのですが、TVシリーズでも将来的には一定の条件下で許諾してもらえるようになったら良いのにと思いはします。


費用面

ピュアシアターの会場「彩の国ビジュアルプラザ映像ホール」は公営施設なので同等の民間施設と比較してかなりの低料金になっています。
ピュアシアターでの会場費用はおおよそ1回目が8万9千円、2回目が8万3千円でした。これは会場使用料と設備使用料の合計ですが、時間帯や使用設備の違いで料金にいくらか違いがでました。
参考までに会場以外の費用としては、パンフやチラシの印刷費で7千円程度、また各イベントスタッフが作ってくれた記念品や展示物はそれぞれ作った方が数千円程度の費用負担をしてくれています。実際にはそれぞれの直接的費用以上に手間暇や間接的費用も掛かっているようには思います。

費用分担

開催について少しずつ相談していたころからオフ会などで知り合った方から開催費用を分担したいという提案を頂いていたのですが、法律上の要件との兼ね合いはどうなるのかが問題でした。
弁護士の意見としては、複数人の主催として費用分担することは可能、ただしその人たちは実態として主催者である必要があり、金銭の授受が上映の対価であると取られかねないような方法ではならないということでした。まずtwitter経由で会ったことのある知り合いという程度では不特定多数の観衆と客観的に区別ができないため共同主催者の住所氏名等本人を特定できる情報を把握していること、また主催者の人数は基本3名程度以下とするのが望ましいと考えるとのことでした。
ただ、もしも権利者等と法律上の争いが発生したような場合まで考えると、共同主催される方には単なる費用分担というレベルを大きく超えて負担が発生する可能性も否定できないため、上記の事項や実施内容を説明し納得頂いたうえでご参加頂いています。

お布施

これらの上映会時にはBDを1セットずつ購入したのですが、あれは何なのかと聞かれることもあります。あれは実のところ上映をするのに必要な事項とは全く関係なく、ただこういった機会に少しながらでも制作者への感謝の気持ちを表せればというくらいのつもりでして、オタク界で言うところのひとつのお布施のようなものです。
ピカピカの新品BDから上映できたらなんか気持ちいいじゃない、なんて思っていたのですが、1回目の時の音声トラブルを考えると再生実績のないメディアを使うのも考え物かも知れません…ご注意下さい。(まあメディアの個体差によるものというのもあまり考えにくいような気もするのですが…)


おわりに

上映会ではせっかくの機会だからと思ってなんだかんだ詰め込み過ぎた面もあるかもしれないですが、ああいった空間で観ることで得られる没入感は他では得難いもので、映像も音響もストーリーも作品の全てをより深く楽しめる機会だったと思います。何よりも自分が観たくてやっている上映会で毎回新たな発見もあります。なのでやること自体は同じ事の繰り返しになりますが1年後にもう1回はやってみようと考えています。

さて、次の記事では上映会実施の参考になりそうな費用や設備の個別事項をまとめています。

フリップフラッパーズ「ピュアイリュージョン」の考察

フリップフラッパーズを見て、「ピュアイリュージョン」とは何なのか、一つの解釈を自分なりに整理してみた。
とはいえ、まあ、正直本編のあれこれを軽視しすぎた考察かもしれず、お気に召さなかったら広い心で笑っていただきたい。

フリップフラッパーズでは「フリップフラップ」に所属するパピカやココナ達が「欠片」またはヤヤカ達が言う「アモルファス」を探すために「ピュアイリュージョン」を冒険する。
ピュアイリュージョンで敵を倒したりして手に入れる目的といえばパピカは「願い事がかなう」と言いヤヤカは「世界征服」と言い、何かを想像させるのだが具体的にどうなるかは判然としない。
トンネルをくぐったピュアイリュージョンが登場人物の内的世界であることは示されていて、いろは先輩のエピソードで示されたようにピュアイリュージョンの「深部」はその人の過去に関連し、そこでの出来事は現実世界にまで影響を及ぼしている。

ところが、いくつかの出来事によってココナ達のいる現実世界もまたピュアイリュージョンであることが示唆されている。
もしそうだとすると、このピュアイリュージョンは誰のピュアイリュージョンなのかということが問題になるところだが、これについてはオープニングに「原作 ピュア・イリュージョニスト」と記されていることから明らかで、つまりココナのいる現実世界は原作者のピュアイリュージョンなのだ。
これはココナの現実世界が視聴者の住む現実の現実世界に似てはいるがどこか奇妙でおかしい理由であり、終盤でココナがピュアイリュージョンに行けない本当の現実世界のような(ただし本当にそうではない)世界に投げ込まれることもそれを示唆しており、更にはこの世界でいくつかうまく説明がつかない事態が起きる理由でもあるのだ。

これらから、実は「ピュアイリュージョン」とはアニメ制作者達の内面世界であり、そこにある「欠片」は制作者が持つアニメ作品の元になる何かであるとする考え方が成立する。これは比喩と考えることもできるが、作中での表現からするとピュアイリュージョンの持ち主のピュアイリュージョン内への投影という見方になる。ココナの現実世界のユクスキュルとユクスキュルのピュアイリュージョンにおける緑の紳士の関係と同じものだ。
この投影により、作中の登場人物はアニメ制作者であり、ピュアイリュージョンは制作者の精神、欠片は作品のアイデアやその人の才能である。登場人物が属しているフリップフラップアスクレピオスは制作者達の組織だから、まあアニメスタジオといったところだ。それゆえに彼らは欠片を集めて「ピュアイリュージョンの解放」やら「世界征服」やらをしようとしていく。
フリップフラッパーズの特色としてピュアイリュージョンの世界が様々なアニメのオマージュになっている点があるが、そう考えるとピュアイリュージョンが多様なカテゴリと表現手法を持った個々別々のアニメ世界を構成しているのも納得できる。それはアニメ世界のそしてアニメ制作者が持つ精神の多様性なのだ。

その構造の上にアニメ制作とはどのような事なのかというテーマが展開される。
作中では誰もがピュアイリュージョンに行けるわけではない。パピカとココナは「一緒の気持ちになって」行くことができたが、必ずしも思い通りの場所には到達できない。
ヤヤカ達は高度な技術の助けを借りてはいるが、それでも誰でも行けるわけではないし外れもある。そしてヤヤカ達に言わせれば大変な「覚悟」が必要なのである。
1話冒頭のパートナー候補の件や持参する宝物が無生物推奨であることなどから、ピュアイリュージョンに入れたとしても行って帰ってくること自体が大変に危険なことなのだ。

ココナやパピカは序盤で否応なしに覚悟せざるを得ない状況に追い込まれて「変身」するのだが、これはアニメ制作の過程でもある種の「変身」が必要ということだ。そしてパピカたちの変身は新たな段階に進むとともにより高度に進歩してゆく。ヤヤカは最初は変身なんてできないと思っているが、しがらみを振り切ってついにはココナを助けるために変身する。一方ユユやトトは覚悟を持ってあらゆる手段を使って欠片を集めてはいるのだが変身なんてできるとも思っていないようだ。

次にこの解釈で重要なテーマとして出てくるのが制作者と周囲の人間関係である。
ピュアイリュージョンに入るにはインピーダンスを0にして一緒の気持ちになる必要があったり、欠片を手に入れ生還するにはチームワークで困難を乗り越える必要がある。その一方で、他の組織との競争に加えて内部の諍いや組織との衝突もあり、ソルトが言うように「摩擦が世界の真理」なのだ。
それでもココナはパピカやヤヤカ、他の面々と協力して事態を切り開いていく。
このように作品を通して描かれる人間関係はまたアニメ制作者を取り巻く人間関係のイメージでもあるのだろう。

ミミとココナの関係は重層的で複雑だ。ミミはピュアイリュージョンに関して強力な力を持っているのだが矛盾した内面を持っているしその力の結末として多くの欠片をもたらした。その巨大な存在の別の側面として、偉大さゆえの影響力というものの功罪を考えさせる。
12話でミミの欠片は力を失うのだが、パピカとココナは自分達でミミの繰り出す怪物をものともしない新たな力を生み出すのだ。

重要なテーマのもう一つは、アニメ制作が制作者や関係者また視聴者まで含めた外部に与える影響である。
ピュアイリュージョンに入った者は入った時点でその性質に影響されてしまう。
更に、ピュアイリュージョンの「深部」は精神世界の基盤となる過去の記憶からなる存在なのだが、それは時に恐ろしいもので、変えてしまうこともできるが、その結果は現実にまで返ってくるのだ。
いろは先輩のそれは美術に対するモチベーションになっていたのだが、深部の変化はそこに対しても影響を与えてしまった。

ココナはそんな場所に踏み込むことに対する不安を抱きながらも立ち向かっていく。
しかし終盤でココナを取り巻く環境が一変しそれまでの世界が崩れ去り、会いたかった家族との再会もまたココナに厳しい状況を突きつける。
そこでは二人のミミがココナに両面からの提案をする。他者の手の内で安全な居場所にとどまるのか、それとも自分で進みたい世界を自分で選ぶのかと。そして、ココナは後悔を恐れずに、自分の身の危険も、そして世界を変えてしまうことをも恐れずに次の冒険に進むことを自分自身で選ぶのだ。
この解釈の上でそれが示唆することは十分理解できるし深く共感できる。

ここまでがこの解釈の上で特に重要と思ったポイントだが、他にも作中のいくつもの設定や要素がこのテーマを構成していて、多くのシーンやセリフについてこの文脈から読むことができる。
そもそも「フリップフラッパーズ」とはどういう意味なのか。この読み方において「flip flap」はアニメ制作工程で紙などをめくる様子、またアニメのカットの切り替わりなどの様子を表し、ひいてはそれを中心とした制作作業を象徴している。そう考えることで「FLIP FLAPPERS」というタイトルも自然に理解できる。

オープニングテーマソングのタイトル「Serendipity」はアニメ制作上のスタッフ・作品・アイデアや才能とのめぐり合わせと解釈できる。
エンディングテーマソング「FLIP FLAP FLIP FLAP」で大事なことなので2回言ったのみならず、さらに何度も反復されていくフレーズは、動き続ける制作作業の継続性を表現しているかのようである。
エンディングアニメーションはパピカとココナの冒険の始まりから終結までの過程だ。登場人物をアニメ制作者と見たとき、この冒険はアニメ作品の制作であり、またより長い期間と見れば制作者の職業人生とも解釈できる。
となればエンディングの最終カット、真っ白な世界に付けた足跡、これこそがその成果として最後に残すものなのだ。

フリップフラッパーズの構成要素は直接的な表現内容の他に、それらが参照する事物からくる含蓄や様々な解釈も含め、多層的多重的な解釈を可能としている。とはいえこの解釈は多少メタに振り過ぎて作品から遊離している感はあるのだが、作品の内側と並行して外側に存在するもう一つの解釈として考えればいくつかの要素をうまく説明できるように思える。
私の場合はこの解釈の元で、フリップフラッパーズという作品によって原作者のピュアイリュージョンを覗かせてもらったのかなと考えるのは面白かったし、本作に限らずアニメを鑑賞する意義をも深めてくれたような気がしている。

そんなわけで週替わり特別上映の入り口で、ああここがピュアイリュージョンへの穴かな、と妙な妄想を抱きながらもう一度フリップフラッパーズの世界に入っていったのだが、この解釈の先には更なる謎が出てくるし作中から読み取れる部分もまだあると思う。
一方で楽しく一方でちょっと複雑な気持ちを抱きながらもまだまだ見足りないと感じる現時点である。